福 岡 市「市街化調整区域」 探 訪

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論文4 福岡市の市街化調整区域について

  • 福岡市の市街化調整区域について

現代人の多くは広大な自然を背に、都市に寄り添って生活するライフスタイルを享受している。

この章では、市街化調整区域の特徴について整理し、それを踏まえて福岡市の市街化調整区域について述べる。

 

昭和43(1968)年に新都市計画法が改正される以前の都市政策は、市場メカニズムあるいは既存の制度内での土地利用に拠っていたため、全国的に無秩序な土地開発が行われ、スプロール化などの問題に対応できなくなっていた。

そこで新都市計画法の下、計画的な市街化を図るため、必要に応じて都市計画区域を、市街化区域と市街化調整区域に区分(線引き)し、後者については当面開発を抑制する地域として指定した[i]

 

それでは、福岡市を例に、より具体的に市街化調整区域について説明する。

 

図1をみると、福岡市の市街化調整区域は、都市計画区域の周辺部に位置しており、また、それらは写真1において、概ね農地、山地、山間部によって占められていることが確認できる。

都市計画法が改正される以前は、それら農地、山地、山間部など開発に適しない土地においても工場や住宅が無秩序に開発されていたため、虫食い状態に宅地化が進むいわゆる「スプロール現象[ii]」が起こっていた。

そこで、福岡市は、昭和45(1970)年12月28日に都市計画区域を定め、市街化区域と市街化調整区域とに区分し(旧早良町の一部は昭和53年3月30日)[iii]。積極的に都市化をすすめる「市街化区域」と開発行為を抑制する「市街化調整区域」にわけ、効率の良い都市計画を目指したわけだ。

とはいうものの、市街化調整区域に区域区分される以前からそれらの地域には、主に農水産業に従事する既存集落が、農水産業物の重要な生産地として存在していた。しかし、市街化調整区域に区域区分された後は、土地利用が40年以上規制された影響で、地域の新陳代謝が鈍くなり、農業人口の減少はもちろんのこと人口減少、少子高齢化問題によるコミュニティの衰退などが懸念されるようになっていった。

 

図1 福岡市都市計画区域地図

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資料提供 福岡市住宅都市局都市計画課  ※網掛け部分が市街化調整区域。それ以外は市街化区域

 

写真1 福岡市都市計画区域(航空写真)

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出典:財団法人福岡アジア都市研究所「市街化調整区域の施策に関する研究(中間報告書)」

 

次に福岡市の市街化調整区域の概要について説明する。

福岡市の都市計画区域の面積[iv]は34.072haである。そのうち市街化調整区域の面積は17,741ha、市街化区域の面積は16,331haである。若干ではあるが市街化調整区域の面積の方が大きい[v]

表2[vi]は、福岡市の市街化区域と市街化調整区域の面積割合を各区ごとに分類したものである。これによると、市街化調整区域は、東区(33.4%)、早良区(79.7%)、西区(79.0%)に多く区分されている。

 

表2 福岡市の市街化区域・市街化調整区域

 

東区

博多区

中央区

南区

城南区

早良区

西区

全市

市街化区域面積(h)

4,670.5

2,528.5

1,563.9

2,608.9

1,267.6

1,999.4

1,819.0

16,458.8

対区面積割合(%)

66.5

78.2

100.0

82.6

77.1

20.3

21.3

47.0

対市域割合(%)

13.3

7.2

4.5

7.5

3.6

5.7

5.2

47.0

調整区域面積(h)

2,341.0

706.1

0.0

548.8

376.4

7,832.8

6,843.5

18,648.6

対区面積割合(%)

33.4

21.8

0.0

17.4

22.9

79.7

80.1

53.3

対市域割合(%)

6.7

2.0

0.0

1.6

1.1

22.4

19.6

53.3

7、019.2

3235.6

1,563.9

3,157.7

1,643.9

9,832.2

8,541.6

34,994.1

  出典:平成17年国勢調査、㈱パスコ  Market Planner

 

福岡市の市街化区域と市街化調整区域の人口の比較をみると、平成27年国勢調査では、市街化区域1,501,300人(97.5%)に対し市街化調整区域37,388人(2.4%)と約40倍の開きがある。

両区域共ほぼおなじ面積なので、それだけ市街化区域の人口密度が高く[vii]都市部に人が集中していることがわかる。これにはコンパクトシティのような行政による市街地拡大の抑制といった社会的要因もそのひとつとして作用しているようだ[viii]

福岡市は「市街化調整区域の土地利用制度の運用方針」において「市街化調整区域は保全が原則であり,特に優良な農地・自然環境等,災害の発生のおそれがある区域については,開発を抑制し,保全を図ることが重要であることから,原則として開発等を許容しないものとする[ix]」 としている。

福岡市は、都心から車で1時間程度の距離に美しく自然豊かな環境が存在しており、それらが維持されているのは福岡市の都市計画に基づく「市街化調整区域の土地利用制度の運用方針」が施策として機能しているからだといえる。

一方で、前述したように土地利用(建物の建築や賃貸化)を抑制している反動により人の転入が極端に少なく、その影響により人口減少問題、少子高齢化問題が顕著になっていることも確かである[x]

また、福岡市は「市街化調整区域の土地利用制度の運用方針」で、次のようにも述べている「市街化調整区域等において良好な市街地の整備が確実に行われる区域、及び既に良好な市街地が形成されている区域においては、長期的・広域的視点に立って、農林水産業上の位置づけや、周辺環境等を十分に勘案しつつ、市街化区域への編入などを検討し、計画的・段階的な市街地の整備を図る」[xi]

西日本新聞』によると、「西区の市街化調整区域に位置する約12haの土地(JR九大学研都市駅近く)を2021年度をめどに市街化区域に編入し住宅や商業施設を含めた新たな街をつくる構想を打ち出している[xii]」とある。

福岡市は、市街化調整区域の土地の保全を維持しながらも市街化区域に隣接している区域においては、その近隣の環境状況を勘案し効果的に市街化区域に組み込んでいるようだ[xiii]

 

福岡市の市街化調整区域の基盤産業は、第一次産業(特に農業)に大きく依存している[xiv]。しかしながら生産者の高齢化、後継者不足により耕作面積は減少し、生産力は大きく後退しており、農業生産が行われない耕作放棄地が増加し、農地の荒廃に繋がっている[xv]。市街化調整区域の活性化を考えるうえで、農業の活性化は重要なポイントであるといえる。

 

これらのことから鑑みると現代人の多くは、広大な自然を背にしながら、都市に寄り添って生活するライフスタイルを享受しているように見える。そして、それが現代の潮流であり、福岡市の方針であるとすれば、市街化調整区域を活性化させるには、定住化促進や新規事業の創出などの他にも多様な論点と考察が必要であるように思えてくる。

 

[i] 財団法人福岡アジア都市研究所「市街化調整区域の施策に関する研究(中間報告書)」(2009年3月)2頁

[ii] スプロール現象都心部から郊外に宅地が無秩序・無計画に広がっていく現象

広辞苑』第七版(2018)岩波書店

[iii] 福岡市住宅都市局都市づくり推進部地域計画課「市街化調整区域で“住”むこと(新制度版)」

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/45627/1/leaflet_green.pdf

[iv] 福岡市は、すべての面積が都市計画区域に定められている。

[v] 福岡市「都市計画区域及び市街化区域・市街化調整区域(平成29年3月30日決定告示分まで)」(最終閲覧日2018年1月5日)

http://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/toshikeikaku/machi/template_4.html

[vi] 財団法人福岡アジア都市研究所「市街化調整区域の施策に関する研究(中間報告書)」(2009年3月)12頁

[vii] 平成17年国税調査によると、市街化区域の人口密度は8,197.4人に対し市街化調整区域は278.2人(共にキロ平方メートル辺り)でありその差は約29倍である。

[viii] 財団法人福岡アジア都市研究所「市街化調整区域の施策に関する研究Ⅱ」(2010年3月)2頁

[ix] 福岡市「市街化調整区域における土地利用制度の運用方針」第2総論(2)②保全すべき区域(2015年9月)

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/1860/1/04_09_tyouseikuiki-unyouhousin_191-206.pdf

[x] 校区別人口増加率(1990−2014年)においてほとんどの校区で人口増加しているが、周辺絵(市街化調整区域)では減少している。 福岡市「福岡市人口ビジョン(素案)」頁22(2015年8月)

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/49519/1/jinko-vision-soan.pdf

[xi] 福岡市「市街化調整区域における土地利用制度の運用方針」第2総論(3)① ア 計画的・段階的な市街地への対応(2015年9月)

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/1860/1/04_09_tyouseikuiki-unyouhousin_191-206.pdf

[xii]「九大玄関口に新たな街」『西日本新聞』2018年1月8日朝刊 1頁

[xiii] 福岡市「市街化調整区域における土地利用制度の運用方針」第2総論(3)①ア 計画的・段階的な市街化への対応(2015年9月)

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/1860/1/04_09_tyouseikuiki-unyouhousin_191-206.pdf

[xiv] 農業人口率の高い順に町丁目を並べた場合上位20位すべてが市街化調整区域の町丁目になる。

財団法人福岡アジア都市研究所「市街化調整区域の施策に関する研究(中間報告書)」(2009年3月)

14頁

[xv] 福岡市ホームページ「第2章福岡市農業の現状と課題」(最終閲覧日2018年1月8日)

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/33130/1/04-part2-chap2.pdf