福 岡 市「市街化調整区域」 探 訪

福岡市の市街化調整区域に関する情報を発信します。

論文5 市街化調整区域活性化にむけての「2つ」の施策について

  • 市街化調整区域活性化にむけての「2つ」の施策について

「車の両輪」のように地域活性化に寄与して走っていく姿こそがベストな運用イメージ

 

(1)「区域指定型制度」について

都市計画法第34条第12号条例第9条第2項第5号・第3項に基づく制度)

この章では、福岡市がすすめる市街化調整区域活性化に向けての新制度について、またそれに伴って地域の合意形成がどのようにして行われているのかを考察する。

 

そもそも市街化調整区域の土地利用は、全国一律の基準により規制及び活用が行われていた。それが、平成12(2000)年の地方分権一括法施行により、開発許可制度については全て地域における独自の判断が可能となった。

その理由として、市街化調整区域の土地利用の状況は、地域ごとに異なっており個別の地域の実情に対応した運用が求められるようになったからである[i]

福岡市は、こうしたなか、市街化調整区域(なかでも農村漁村地域)において地域住民によるまちづくりに関する計画、合意等(地域住民が地域課題の把握、将来像の共有、その実現のための方策に合意)を踏まえ、地域の特性に応じ都市計画法第34条第11号[ii]や同法第34条第12号[iii]に基づく制度を活用するなど地域のまちづくりの取り組みを支援する方針を示した[iv]

特に都市計画法第34条第12号に関していえば、福岡市は条例第9条第2項第5号・第3項による「市街化調整区域で“住”むこと[v]」(平成27年12月改訂)「市街化調整区域で“住”むこと 新制度版[vi]」(平成27年12月発行)の「区域指定型制度」を制度化し、市街化調整区域への定住化促進を図ろうとしている。
2つ制度は、共に市街化調整区域に指定された「指定既存集落[vii]」内で住民による合意形成(合意形成については4(3)にて詳しく後述する)がなされ、市の手続きを踏まえた場合に限り、住宅の第三者による賃貸、あるいは余剰地の活用が可能になる制度である。2つ制度の違いは、「市街化調整区域で“住”むこと」が個別の土地や建物のみに適用することに対し「市街化調整区域で“住”むこと 新制度版」は「指定既存集落」の範囲内で、住民の合意形成を得た区域を指定し、その区域内に限り土地や建物を定住化のために有効活用ができることにある。

 

現在(平成30(2018)年1月)確認できる「市街化調整区域で“住”むこと 新制度版」を利用した事例では、志賀島地区(約5.7ha平成28年8月22日公示)[viii]今津地区濱崎町内会(約5.1ha平成29年7月6日公示)[ix]今津地区緑町町内会(約7.5ha平成29年12月28日公示)[x]今宿上ノ原地区堀ノ内隣組合(約5.1ha平成29年12月28日公示)[xi]の4事例が公示され運用されている。

 

指定を受けた4事例の地区においては、用途地域における第一種低層住居専用地域並の形態規制内で建築物を建築することができる[xii]。また区域指定をうけた場合、指定区域内の土地の固定資産税評価額が「地目」によってはあがることが考えられる[xiii]

 

2)「地域産業振興施設」について

都市計画法第34条第10号ロ及び同法施行令第36条第1項第3号ホに基づく制度)

 

「地域産業振興施設」の特徴は、前述した「区域指定型制度」のように地域の組織[xiv]の発起が起点となるのではなく、市街化調整区域で新たにレストランや宿泊施設などの事業運営を目指す「事業者」の提案が制度運用の起点となることである。

 

そもそも市街化調整区域では、自然や農地を保全するため、生活者の生活利便施設や生産者が行う店舗等以外は建築できないなどの規制があった。

福岡市は、市街化調整区域の活性化を促すため、それらの規制を緩和し(福岡市開発審議会付議基準の改正[xv]を踏まえ)新たに生産者以外の事業者が営む施設や観光客を対象とした施設などの建築を可能とする新制度として「地域産業振興施設」創設したのである。

当制度は、平成28(2016)年6月8日から運用を開始し、主に市街化調整区域内の指定区域8校区(東区:志賀島勝馬 早良区:脇山、内野、曲渕 西区:北崎、今津、能古)において地域の合意形成のもと、農林水産物、歴史・文化資源、自然景観などの地域資源を活用し、地域の農林水産業や観光などの産業振興に寄与する建物(レストラン、カフェ、直売所・休憩・宿泊施設、体験・交流施設・観光案内、土産物屋)を新たに建築できるようになった制度(都市計画法第34条第10号ロ及び同法施行令第36条第1項第3号ホに基づく)である[xvi]

 

当制度を活用した事業は、福岡市東区志賀島勝馬地区においてJA福岡市東部が、新規就農者を対象とした研修事業のための新たな研修施設(約70㎡)の建設事例[xvii]が唯一である(2018年1月11日現在において)。

 

JA福岡市東部はインタビューで「当研修施設は勝馬地区の人口減少、農家減少に歯止めをかけるための施設であり、JA福岡市東部が店舗として使っていた場所に建築した」また「当研修施設は、主にイチゴの農業研修を行う施設であり、農業研修を受け持つ勝馬地区のイチゴ農家の方はすでに確保しており、将来的には研修生が勝馬地区で農地を賃借し就農することを目指している」と述べている[xviii]

 

「区域指定型制度」と「地域産業振興施設」の2つの市街化調整区域活性化制度は共に「FUKUOKA NEXT BOOK[xix]」の「農山漁村NEXT」の中で「福岡市の取り組み」として紹介されている。

 

福岡市は、これら2つの制度を「車の両輪」と位置づけ、効果的に運用することで、相乗効果が生まれることを目指している[xx]

 

ここでいう相乗効果とは、例えば「地域産業振興施設」により新しい事業を立ち上げ雇用が生まれた場合でも、その被雇用者の住居を「区域指定型制度」の活用によって地域でタイムリーに提供することができれば、より多くの社会的効果や経済的効果が期待できることを意味する。

よって、どちらの制度が先に動くというものではなく、2つが互いにうまく機能しあい「車の両輪」のように地域活性化に寄与して走っていく姿こそがベストな運用イメージであるといえるだろう[xxi]

ちなみに「区域指定型制度」は福岡市住宅都市局都市づくり推進部地域計画課が、「地域産業振興施設」は福岡市総務企画局企画調整部の部署がそれぞれの所管となる。

 

[i]福岡市「市街化調整区域における土地利用制度の運用方針」第1 運用方針策定の背景及び主旨1(2)地方分権と地域の実状に対応したきめ細かな運用(2015年9月)

[ii]都市計画法第34条第11号、条例第7条、第8条」市街化区域に隣接・近接し一体的な生活圏を形成する市街化調整区域内の集落(概ね50戸以上の建築物が敷地間隔50m以内で連なる土地の区域内)について、条例で区域と用途を定めることにより、当該区域内の土地で定められた用途の建築目的であれば開発許可が可能となる制度。

[iii]都市計画法第34条第12号、条例第9条第2項第5号・第3項」開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為について、条例で区域、目的又は予定建築物の用途を定めることにより、定められた基準に適合するものについての開発許可が可能となる制度。

[iv]福岡市「市街化調整区域における土地利用制度の運用方針」第2総論1(3)①イ農山漁村地域などにおける課題への対応、第2総論1(3)②住民主体のまちづくり(2015年9月)

[v]福岡市住宅都市局都市づくり推進部地域計画課「市街化調整区域に“住”むこと」(2015年12月改正)

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/45627/1/leaflet_red.pdf

[vi]福岡市住宅都市局都市づくり推進部地域計画課「市街化調整区域に“住”むこと 新制度版」

(2015年12月発行)

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/45627/1/leaflet_green.pdf

[vii]条例第9条に規定する指定既存集落(平成16年4月1日指定)

指定既存集落

集落名

東 区

志賀島

志賀島勝馬、弘

蒲 田

蒲田、名子

早良区

入 部

四箇、西入部、東入部、西油山

内 野

内野、早良、西、石窯、曲渕、飯場

脇 山

脇山、小笠木、椎葉

西 区

北 崎

西浦、宮浦、小田、草場

元 岡

元岡、桑原、田尻、太郎丸、今出、北原

今 津

今津、浜崎、大原、呑山

今 宿

横浜、今宿上ノ原今宿青木、谷

周船寺

周船寺、女原、飯氏、千里、徳永、宇田川原

橋 本

橋本、福重、戸切

金 武

金武、飯盛、羽根戸、吉武

能 古

能古

福岡市「市街化調整区域における土地利用制度の運用方針」203頁(2015年9月)

[viii]志賀島地区

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/57768/1/shikasima_kuiki_kijun.pdf

[ix]今津地区濱崎町内会

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/57768/1/20170612imadu_hamasaki2.pdf

[x]今津地区緑町町内会

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/57768/1/20171214imadu_midorimati.pdf

[xi]今宿上ノ原地区堀ノ内隣組http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/57768/1/20171214imazyuku_kaminoharu_horinouti.pdf

[xii]福岡市住宅都市局都市づくり推進部地域計画課「市街化調整区域に“住”むこと 新制度版」参照

(2015年12月発行)

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/45627/1/leaflet_green.pdf

[xiii]区域指定制度が告示された場合、すでに「雑種地」の所有者はその土地の50%評価減率がなくなるためその分評価額があがる。区域指定制度が告示された場合でも都市計画税は免除されたままである。告示後、仮に指定区域内の土地の売買等が活発になればその将来において評価額があがる可能性もでてくる。

福岡市財政局税制課への聴き取り調査(2018年1月16日実施)

[xiv]自治協議会や地域まちづくり協議会などの地域住民で構成された組織

[xv]福岡市開発審査会(住宅都市局建築指導部開発・建築調整課)「福岡市開発審査会付議基準」第1市街化調整区域における開発行為・建築等行為 20−1当該地域に密接に関連するもので、地域の産業振興等に著しく寄与すると認められる建築物で、市街化区域で開発行為等が困難なもの 20−2地域コミュニティの維持等が課題となっている農村漁村地域で、地域産業の振興の観点から必要であり、地域住民等による合意形成がなされていると認められる建築物(2016年6月改正)

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/1393/1/kaihatsusinsakaifugikijun.pdf

[xvi]福岡市「市街化調整区域の土地利用規制緩和(豊かな自然と農水産物を活かした集約ビジネスを農山漁村地域で)」(2016年6月8日運行開始)

 http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/53926/1/20_2kaiseigaiyou.pdf

[xvii]「福岡・志賀島であまおう作ろう」『西日本新聞』(2017年12月13日)朝刊 30頁

[xviii]JA福岡市東部営農経済部営農生活課への聴き取り調査(2017年12月14日実施)

[xix]「FUKUOKA NEXT BOOK」 農山漁村NEXT http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/52908/1/FUKUOKA_NEXT_BOOK_Part4.pdf

[xx]福岡市総務企画局企画調整部への聴き取り調査(2017年9月25日調査実施)

[xxi]福岡市西区役所総務部への聴き取り調査で共有した内容(2018年1月15日調査実施)